エイミーは泣く

正直ただの雑記

かなり遠くまで来たんだろうか、もう前の道は見えない

ぶん投げた賞味期限の切れたビールと、シンクに流した飲みかけのワインが混ざり合ってシンナーみたいな色やら匂いやらをしていた。

キャベジンを飲もうと立ち上がったけど、胃の中でむせかえるように暴れるもののせいで結局はまた洗面所に戻り、勢いよく吐き出してしまった。

喉の奥で何かが切れるような音がして、痰を吐けば血が混じる有様だった。

血の色はガソリンの色によく似ているような気がした。

 

ギターを手にとっていくらか弾いてみた。

世に溢れるいわゆるかっこいいバンド。

俺はそれには到底近づけないから、それを殴るために曲を書いている。

うなるようなギターソロも、激しく歪んだルードなベースも、ハイハットでつんざきながら耳を突くバスの音も、理想とする音楽などたくさんあるが、俺にはできない、俺はジミーペイジにもなれない、ジョニー・マーにもなれない。

俺は昔から、俺の音楽の文脈がフォークやポップスにあるのがコンプレックスだった。

中学に上がり、nirvanaweezerを聴き、joy divisionやR.E.Mに熱狂した俺は曲を作るようになって、彼らと俺の文脈の違いが色濃く出て、それが悔しかった。

俺が昔に気持ち良く聴いていたのはニールヤングやカーペンターズ、オリヴィアニュートンジョンだったんだから当たり前だけど。

結局俺はロックには向かないのだろうか、そんなことを思いながら出来上がった3曲をパソコンに落とした。

 

余談。

曲を作る量とスピードだけは異常にすごいと思う、1日3曲は簡単にできてしまうんだから。

 

スタジオに入り、ギターを投げつけ、その後友人と会い、飯を食った。

「どんな姿であれ、お前のことを好きな人は大事にしてあげろよ、それが取り繕ったものでも」

B級映画のセリフか?と皮肉を言いかけたけど、なんとも、身に沁みてしまった。

ありがとう、と自然に出たのはずいぶん久しぶりだった。

生涯、私の心はこんな当たり前のことを言うのに何か一種の覚悟が付きまとってしまうのだろう、とも思って切なかったが。

 

心が優しいわけではないのだ、俺は。

「母が体調を崩してしまって...」と申し訳なさそうに仕事を休んだ夕勤の女の子が、この間お土産を買って戻ってきた。

深夜帯の業務に入る俺に帰り際、「河野さんもどうぞ」って渡されたその土地の銘菓をかじりながら「親御さんは?」と聞くと、「大丈夫でした」と微笑んだ。

決して俺が優しいわけではないが、そんな表情が少し嬉しい、失わずにいるというのはとてもとても尊いことだ。

 

店長がカウンターの上にテレビを買ってきていた。

流れているのは俺が置いていったタクシー・ドライバーだった。

「俺もう働きたくねぇ」とぼやくと、「じゃあお前も俺みたいに店を持つか?」と言われた。

曖昧な返事をして、今日も食器を洗い、棚を整理して、店を掃除した。

客足が伸びない夜はこうして日記を書く余裕も、歌詞を書き進める余裕もあるものだ。

 

バンドをやるから苦しいのか、苦しいからバンドをやるのか。

それはどちらでもなく、俺はまだ信じているからバンドをやるのだ。

 

透明な袋に液体を垂らして、頭を突っ込んでその匂いをかぐことで悦に浸っていたあいつも、天井にぶらさがったのに無理やり引きずり降ろされてしまった俺も、今日は暇なので酒を浴びている。

 

俺はもう一ヶ月以上、酒が入っていない日はない。