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正直ただの雑記

3/23

友人に團という男がいる。

 

そいつは知り合った当時から無茶苦茶なやつで、女物のシャツを着たスキンヘッドという格好で、そのくせ体には一つも墨が入っておらず、家はきれいに片づけられた綺麗好きな男だった。

出会った当初は高円寺に恋人と住んでいたのだが、定職にもつかず、家で本ばかり読んでいた彼に嫌気がさしたのか、気付けば彼は家を追われ、横須賀なる辺鄙な場所に移り住んでいた。

「酒を教えてくれ」と俺に頼み込んできたのは、その恋人に振られてすぐ、家具の少ない部屋でちゃぶ台を出してグリーンカレーを食っている時だった。

それくらい、外見に似合わず悪いことを一つも知らないように見えるやつだった、実際はしていたのだが。

 

團は昔から自分にひどく劣等感を持っていて、時折寂しそうに自分のことを蔑んだ。

俺は、自分を蔑むようなやつを慰める時というのは、たいてい気を使っている時か煩わしくて早く話を終わらせてしまいたい時なのだが、どうにも彼には気を使うのも失礼だ、と思い、かといって「はいはい」と流すのも違うと思った。

気付けば俺も自分の話をしていた、俺たちはどこか似たところがあった。

 彼の人生は何一つ知らないが。

 

彼のことを友達だと思ったことは一度もなかった。

お互いにたまに会って酒を酌み交わすくらいの関係。

そんな彼は来月すぐに東南アジアに行く。

 

「俺死ぬわぁ」と笑うのにひどく楽しそうだった。

「死ぬ」などのネガティブな言葉を言葉として出すだけの奴は腐る程見てきたが、彼の笑い顔はなんだか言葉としてではなくて、まるで身近にそれを感じているかのようで余計に虚しかった。

 

空きっ腹に酒を入れながら、俺たちは泣いた。

うまくいかなくても幸せだと言えることがあるのかはわからないくらい俺たちは若いし何も知らない。

だが、同時に無責任に浴びせられる励ましや優しさにも食傷気味だった。

 

何かしてやれることはないか、とか、せめて優しく、とか、そんなことは一つも思わなかった、ただ俺たちは、お互いをよく知っていて、だから悲しかったのかもしれない。

 

もう二度と会うことがない人は何人もいる。

どれも大事にしてきた人間だけだ。

 

俺はいい音楽を。

せめて彼にはその時までの安寧を。

 

悔しいことしかないから泣くのではなくて、泣いてしまうほど大事にしたものから不幸になるような糞溜めが憎くて仕方がない。