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正直ただの雑記

4/12

順当にいっていれば高校生の年齢の頃に彼女と付き合った。

当時頻繁に利用していたスタジオの近くのコンビニで働いていた彼女は高校を中退して通信制の高校行で勉強を頑張りながらコンビニで働いて生活費を稼いでいる健気な女の子だった。

コンビニ店員のくせに金髪で、ピアスが目視できるだけで5つ以上耳についていたけど、色が白くてそのくせ目は切れ長で細っこい指で僕が吸っていたメビウスを手渡してくれる女の子だった。

 

ある日、いろいろと落ち込んでいた僕は半ばヤケクソ気味に連絡先を交換し(交換させ)、デートの予定を取り付け、休日ジョイフルという地方にしかないしがないファミレスで昼ご飯を食べ、小さな映画館で洋画を見て、ゲームセンターでプリクラを撮った帰りに告白して付き合うことになった。

当時やっていた一つ目のバンドはあまりうまくいっておらず、高校にも馴染めなくてほとんど登校していなかったから、大概は彼女の家に入り浸って、彼女が帰宅するまで本を読むか、洗濯掃除をするか、部屋でタバコを吸っていた。

 

彼女は僕が部屋でタバコを吸うのを嫌がった。

よくリビングでこっそりとふかしていたら突然帰宅した彼女に本当にすごい剣幕で怒られたものだった。

ベランダで二人で並んでタバコを吸うのも好きだったけど、僕は一人で吸うタバコの方が好きで、怒られてからは少し移動して、キッチンの換気扇の下でよくタバコを吸っていた。

 

僕は思えばズルばかりしていて、「今が楽しければそれでいい」と先延ばして、バンドがうまくいくようになったら「これで食っていけるかも」と周りを騙して、とにかく最低だった。

最低だったけど、彼女は僕のことが大好きだったし(これは自信を持って言える)僕も彼女のことが大好きだった。

生まれた時から僕は「俺はクズだ」と、トム・ヨークばりの鬱を発揮していて、事実、僕は足が遅く、頭が悪く、太っちょで(中学から食が細くなって痩せた)、算数が苦手だった。

中学に上がればクラスの女子にいじめられ、野球部の先輩に殴られ、体が大きくなったら逆に人を殴るようになり、結局追い出されるように実家を離れた。

そんなやつだから、そんなクズだから、そんな卑怯者だから、最低だったけど、けど彼女は最低な僕のことも愛してくれていた。

 

東京に出てきて、未だに十代の頃のあの子を思い出す。

別に禁煙でもなんでもない自分の部屋の換気扇の下でタバコをふかす様子を見た友達が「なんでまたそんなところで」と訝しがるけど、僕は換気扇の下で数一人のタバコが未だに好きだし、あの子のことがまだ好きなのだ。

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東京に来てしばらく経って、知り合った女の人がいた。

僕より5つ年上の綺麗な女性で、優しくて仕事のできる人だった。

一方僕はというと無職フリーターで、金がなくなれば単発の派遣バイトで生活を食いつなぐようなカスだったんだけど、その人はそんな僕を少し呆れた目で見ながらも、ご飯に連れ出してくれたり、僕が好きな三ツ矢サイダーを会うたびにくれたりした。

 

東京に来てなかなかバンドを組めない僕にいつも「早く就職しなよ」と、お前はワシのオカンか、みたいなことを言う人で、僕は鬱陶しさからその度にそっけない態度を取ってしまった。

一度彼女の家で手料理を振舞ってもらった時に、それを言われて僕は少し強い言葉で返して家を出てしまったことがあって、外に出て30分で「しまった」と後悔し、すぐに飛んで戻って玄関を開けると、彼女はテーブルの前で少し泣いていた。

僕はそれを見てもっと泣いて、泣きながら抱きついて「ごめん、ごめん」と言った、ひどく情けなかったと思う。

 

なんで僕みたいなクズに優しくしてくれるのか、明確な理由はずっとわからなかったけど、結局彼女と今では会うことはなくなった。

彼女が僕に「好き」と言ってくれたけど、僕は彼女が「好き」と言ってくれる以上に彼女のことが好きな自信がなかったから。

ただ、彼女に酷いことを言うたびに心が痛んだこととか、彼女がしてくれたたくさんの優しいこととか、僕はそれを大事にしたいこととか、結局彼女に何一つ返せなかった僕が思うことではないと思っている。

 

道端で、飲み過ぎか、彼女への罪悪感か、自分へ抱いた気持ち悪さか、よくわからないけど、ゲロを吐いたことがある。

僕は袖の汚れた、彼女が買ってくれた花柄のシャツを洗うために急いで近くの公園のトイレで必死にゲロを落とそうと水を腕にかけ続けた。

もう冬が近かったせいか、とても水は冷たかった。

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 まだ地元にいた頃、一つ目のバンドを解散してすぐ、僕は一度パニックを起こして道端に座り込んでしまったことがあった。

ガタガタ震えてその場から動けなくなった僕を、彼女が仕事場を飛び出して迎えに来てくれて、急いで病院に担ぎ込まれた。

診察を受けて、診察結果を言い渡され、彼女に手を引かれてタクシーに乗って、彼女の家までついた。

渡された薬を飲むと頭がぼうっとして、彼女と一緒に布団に入るとすぐに寝てしまった。

 

それから定期的に病院に行くように言われた。

またパニックを起こすんじゃないか、と心配した彼女からは自分の家に住むように言われて、彼女が仕事に行った後、診察の度にタクシーで少し離れた病院まで通った。

惨めだなぁと思いながらも、それでも周りに心配はかけたくないから、毎日ちゃんと薬を飲んで、病院に行って、そうやって毎日過ごしていた。

 

当時読んでいた小説の言葉も、大好きだった詩集の綺麗な文字も大して響かなくなった頃、僕は自分がおかしいんじゃないかと思うようになっていた。

今も思うことだけど、こんな目にあって、周りにも迷惑をかけて、それでもしぶとく生きているのは自分がいけないじゃないか、と、本気で思うようになった。

 

ある日、いつものように病院に行って、診察を終え、ロビーでジュースを片手にぼうっとしていた。

ずっと思っていたことを、繰り返し繰り返し思っていたのに、その日はふと、別の感情が蘇ってきた。

 

僕は逆上がりが苦手で、クラスでできるようになったのが一番遅かった。

そのせいでクラスの子たちにバカにされたりもしていて、悔しいし悲しかったけど、けど精一杯に練習をしていた。

情けない思いをしたけど、最終的にはなんとかできるようになって、僕はなんだか、勝手に報われるような気がした。

それから、僕は17,18くらいまで、精一杯やれば、思うようにはならなくても、報われるんだ、と、多少なりとも思っていたのかもしれない。

 

自分なりに精一杯生きたつもりだった。

クズだったけど、精一杯やったつもりだった。

その結果が、これだった、自分がおかしいだけだった。

 

僕は悔しくて、情けなくて、また泣いた。

タクシーにベタベタの顔で乗り込んで、運転手に気味悪がられながら、三千円を払って、彼女のマンションの前で降りた。

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17の頃のクリスマスには彼女とはすでにギクシャクしだしていたと思う。

当時出場したバンドのコンテストで酷評されて、メンバーの落胆して諦めきった表情と、それでもなんとかなる、とツアーを組んで惨敗した結果と、もう先は長くないんだと思ったバンドのことと、いろんなことが重なって、僕は彼女にも辛く当たるようになっていた。

 

彼女と冬場の混み合ったデパートを歩いていた時、彼女の友達が前から歩いてきて、彼女は少し立ち話をしていた。

彼女の友達は、僕の風貌を見てヒソヒソと笑うように何かを言っていて、彼女は彼女でそれを一生懸命に取り繕っていた。

僕はそれが無性にムカついて、彼女の友達に突っ掛かり、泣かせ、彼女を放置して家に帰った。

クリスマス前なのに最低な彼氏だった。

 

そのあと、彼女のマンションで付き合って初めて本気のケンカになった。

僕は僕で支離滅裂なことを言って、彼女は彼女でかっとなったのか、聞いたこともないような罵倒をされた。

彼女は部屋を出て行って、友達の家に泊まると言っていた。

 

僕は仲直りがしたかったけど、口で謝るのはなんだか恥ずかしくて、結局、クリスマス当日、慣れない料理を作って、近所の花屋で綺麗なガーベラを買った。

「冬なのにガーベラがあるんですね」と僕が言うと、店員さんは「今年は気温が高かったからじゃないですかね」と優しく教えてくれた。

クリスマスに部屋でずっと待っていたけど、彼女は夜遅くなっても帰ってこなかった。

僕は冷たくなった料理とか、少し元気のなくなったように見えた花束とか、読みかけだった小説とかを見ながらも、一向に帰らない彼女に苛立っていた。

 

外は雨が降ってて寒かったけど、すぐに飛び出して、とりあえず駅まで行こうと走った。

肌が痛かったけど、顔を見て一言言わないと気が済まなかった。

駅からマンションまでの一本道の中間くらいに差し掛かったところの歩道橋のそばで、彼女を見つけた。

彼女は厚手のコートを着ていて、傘をさしていた。

彼女は僕を見るなり泣き出して、僕はそれが申し訳なくて、すぐ駆け寄って手をつないだ。

家に晩御飯作ってあるから帰ろう、というと、小さくうなづいた彼女とは、ずっと一緒に居られる気がしていた。

 

気がしているだけだったけど。

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気を使って、本音を隠して、簡単には腹を割らない。

コンドームで覆い隠しているみたいで、そこだけは嫌いだった。

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的なEPを5月に出す予定です。

 

安達祐実のインスタグラムを見ながらこれを書いています。